妖怪HUNTER

【ようかいハンター】

  • 新潮社刊「月刊コミック@バンチ」創刊1~3号掲載
  • 単行本:全1巻(バンチコミックス)
  • 諸星大二郎氏の『妖怪ハンター 闇の客人編』を大胆演出!

原作:諸星大二郎 × 漫画:井上淳哉

(注)
この『妖怪HUNTER 闇の客人』は、諸星大二郎先生著の『妖怪ハンターシリーズ(稗田礼二郎のフィールド・ノート)』のリメイク企画です。
原作を元に解釈を変えて、大胆にアレンジさせていただいております。
これは作家を変えて演出しなおすという事で、諸星先生の寛大なる許可を頂き進めさせていただきました。
偉大なる『妖怪ハンターシリーズ』に傷をつけないよう別物として、あえてタイトルを少し変え英語表記の『妖怪HUNTER』としました。
諸星先生に感謝と敬愛の意を表しつつ、違った感性の新たな妖怪HUNTERの世界ができあがりました。
是非みなさんにも楽しんでいただけたらと思っております。

2011年7月8日 井上淳哉

物語の導入紹介

考古学教授、稗田礼二郎は大学で講師をしている。

そこにやってきた二人の男。
彼等は大鳥町という町で断絶された「鬼祭り」という古い祭りを復活させるため、稗田に協力を求めやってきたのだった。

依頼を引き受けた稗田は、祭り当日、ゲストとして大鳥町に招かれた。
夏の暑い盛りの大鳥町に到着した稗田。

ひょんな事から知り合った少女、大谷綾女(あやめ)。
彼女は実行本部まで案内してくれるという。

町の入り口には、巨大な鳥居が建っていた。
これも過去、鬼祭りに使ったものを稗田の調べで復刻させたものだった。

実際に大鳥町に来てみて稗田は、祭りが随分都合のいいように解釈を変えられて進められている事を知る。
これは祭り本来の姿ではない。
しかし町民のほとんどはそれを喜び楽しんでいる。
稗田は祭りのあるべき姿に自問自答する。

そんな時、実行本部に一人の老人が現われた。
すでに認知症が進んだ老人だったが、祭りに反対しているようだった。
ボケてもなお、祭りに反対する姿に、何か謎があると感じた稗田だったが…。

とうとう祭りは始まってしまった。
稗田の協力のおかげで、忠実な様式で執り行われている。

実行委員オリジナルの山車に踊り。
観光客の事を考えて見栄えのいいアレンジがされている。
おかげで観客は大賑わい。
しかし…。

ついに事は起こってしまった。
この祭りに隠された真実とは…?
町に古くから伝わる特殊な実体が次々に暴かれていく。

町では騒ぎが起こっていた。
一体何が起こったのか?
人々が逃げてくる先には、この世にいるはずのない異形の存在があった。

人々を守るために戦う稗田礼二郎。
彼はこの恐ろしい状況を打開する事ができるのだろうか?

この企画が出来るにあたって

『妖怪ハンター』の漫画リメイク企画。
この話をもらったのは随分前で、実際に立ち上げる4~5年前だったでしょうか?
当時、僕が『おとぎ奉り』の4~5巻くらいを描いている時でした。
今の@バンチ編集長(S)から声をかけていただいたときに、提案してくれた企画だったのです。

ですがご存知の通り『おとぎ奉り』は12巻まで続いたので、当然すぐに引き受けられる話ではありませんでした。
ですが僕本人 凄く面白そう! と思ってしまったのです。

当時週刊バンチの一編集だった(S)は会うたびに色々企画の提案をしてくれました。
そのどれも興味をそそられる企画ばかりだったのですが、『おとぎ奉り』はまだまだ続くので、引き受けられないまま月日だけが流れていきました。
(ホントS氏はよくここまで何度も足を運んでくれたと思います。)

そして『おとぎ奉り』もあと半年程で終わるという頃、変化がありました。
S氏が週刊バンチの副編集長に昇進したのです。
そこで今度は「オリジナルで是非!」という事になりました。
その流れで僕はオリジナルの『BTOOOM!』の企画を立ち上げ、それにGOサインが出ました。
(それでも色々大変だったと聞きますが)

漫画の連載企画を通すだけでも物凄く大変だとは聞いていますが、オリジナルがいかに大変かが良く分かる話ですね。
幸運にもオリジナルで始められる事ができましたが、僕みたいに連載経験が1本のみ程度だと、編集部主体の企画モノしか描けないということはザラにあることなのです。
でも、僕は『妖怪ハンター』の企画がやりたくてしょうがなかったのですが、この時点では完全にあきらめていました。

そんなこんなで『BTOOOM!』もなんとか軌道に乗り始めた頃、週刊バンチの休刊が決まりました。
すぐに新雑誌に連載続行が決まっていたものの、切り替わり期間の影響で、僕とウチのスタッフは半年近く手が開いてしまう事になりました。
このままではスタッフみんな、おまんまを喰いっぱぐれる…って事で、「例の企画…、同時掲載で動けませんかね?」と僕の方から提案しました。

つまりこの企画は作家が描かされるという姿勢ではなく、描かせてください!という姿勢で立ち上がった企画なのです。
結果、この手のあいた半年は、ネット配信版BTOOOM!(Anotherside episodeHIMIKO)も入ってしまったため、鬼のようなスケジュールになってしまいましたが、なんとか形になりました。

編集部も雑誌立ち上げでなかなかの忙しさでしたが、それに負けないくらい『妖怪HUNTER』と『BTOOOM!』のダブル掲載は大変でした。
でも、ただ大変なだけでなく、とてもいい仕事ができたと思っています。
それは新創刊としての企画だけでなく、作品内容の方です。

さらに話は長くなりますが、僕の『妖怪ハンター』の出会いは映画『妖怪ハンター ヒルコ』を劇場で観た時です。
僕が専門学生の頃、授業と部活の間の時間つぶしに友人につれて行かれて、予備知識ナシで観たのです。
正直ヒルコがどんな姿か分からずに見たので、えらく恐ろしい思いをしました。
低予算の日本映画でしたが、アイディアに富んだ、最高傑作でした。
田舎で育った僕は、田舎の学校を舞台にした謎解き&ノスタルジー&初恋という要素にメロメロになりました。
映画自体もう10回以上観てますし、自分のモノづくりの底辺にしっかり根付きました。

その後に諸星先生の原作『妖怪ハンターシリーズ』を知ったのです。
映画とは別物でしたが、こちらも衝撃的な思いをしました。
僕が田舎育ちだったせいか、郷土文化を題材にここまで解釈を広げた切り口が、日常のすぐそばにこんなにリアリティーのある非日常が隠れているのだと思わされてゾッとしました。

思えばその後手がけた『ぐわんげ』や『おとぎ奉り』も、『妖怪ハンター』が原点だったんですよね…。
ですので、今回の企画でも、この日常のそばにある非日常を『妖怪ハンターシリーズ』のメインテーマと解釈させてもらって挑戦しました。
そして全精魂を詰め込んだつもりです。
正直、ちょっと自信あります。

映画を一本観たかのような感覚を意識しました。
夏の夜、寝る前に軽く楽しんでもらうのにピッタリだと思います。
是非、読んでみてください。

2011年7月8日 井上淳哉

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