エキストラに参加してきました
2005年1月。
火事で1ヶ月以上遅れてエキストラの撮影が始まりました。
こんな機会、二度と無いぞ!と思った僕は、エキストラに参加することにしました。(ヒマですネ~)
プロデューサーに「できるだけたくさん連れてきてください!」と言われたのであちこちに声をかけて20人程連れて行きました。
早くに行くとかぶり物妖怪がもらえると聞いていたので、待ち合わせは独断で早朝にセッティング!
案の定、友達からは「早すぎるだよ!」と大ブーイング。
[大人数が一箇所でボロを着て待機している様は、まるで難民ですな…。600人も集まった最終日。それを手際よくさばくスタッフの方々には感心しました。プロはどこの現場にもいるんですネ]
[意外とパーツが多くて大変…。ロッカーが無いので、ビニール袋に名前を書いて隅っこにポイ。貴重品はもちろん本部に預ける]
午前中は着替えでつぶれました。
エキストラだというのに思った以上にしっかりとした被り物でびっくり。
手や目の隙間にドーラン塗られて楽しかったです。
[これが僕です。じじいっぽい妖怪だったので、猫背にしてます。名前は百々爺(ももんじい)と云うそうです]
[なんか千と千尋にこんなのいましたね。ちなみにこの妖怪、恐ろしく視界と呼吸に難がありました]
この後、マスクドエキストラ妖怪たちの撮影会がありました。
なんかカードとかにできるように写真素材を撮っておくそうで、みなさんいろんなポーズで撮られていました。
身内だけで記念撮影。
この中に、サイキックフォースのかどつかささん・ネイルの声の加藤みどりさん・ケイブの書道家(?)若林實山先生などが紛れています。
この頃まではとても楽しい雰囲気で撮影が始まろうとしていました。
まさか…、この後で地獄のエキストラが始まろうとは誰も予想だにしていなかったのです…。
ロケ弁を頂いて、さあ撮影開始!
スタジオ内はCG合成のため、全面ブルーシートに覆われていました。
入り口で太鼓を渡された僕は『太鼓を持った百々爺』として出演することになりました。
みみっちい話ですが、この太鼓を持った百々爺は本編にバッチリ(?)映っていました。イエ~イ!(アホ)
予告編でも流れてるシーンなので、ウチのDVDに撮ってスローで確認できました!
あと角川書店「写真で見る日本妖怪大図鑑」にもばっちり載っちゃってたので大喜びです!
さて、子供じみた「映ってた自慢」はこのへんにして…、
スタジオではすでに少人数の妖怪の素材撮影が始まっていました。
スタジオ内にはいろんな妖怪がいて、準レギュラークラスの出来のいいヤツや自分ひとりで支えられない大きいヤツが不気味な存在感をかもし出していました。
さっそく監督に挨拶をしに行きました。(ちょっと優越感~!アホ)
今日は撮影のクランクアップ(最終日)だったので、レギュラーキャラ役の芸能人は誰一人来ていませんでした。
「芸能人に会えるかもヨ!」と言って友人達を連れてきた僕は、この時点で嘘つきの烙印が押されました。(涙)
そしてしばらくして大人数の撮影が始まりました…。
なんとなくスタジオ中央に広がるエキストラの方々。
すると山口助監督がメガフォンで
「皆さんもっと中央に集まってください~!」
徐々に中央に集まり始めるエキストラ。
「もっともっと集まってください~!」
エキストラ妖怪はもう寿司詰め状態まで密集状態に…。
大体夕方6時の山手線くらいの密集度でしょうか?
それはいいんです。
確かにこれくらいじゃないと、お祭りの賑やかさと迫力は出ないでしょうから。
そこで撮影再開!
それからしばらく、いろんな角度の妖怪群衆のパターンが撮られました。
体内時計で夕方くらいでしょうか、だんだん疲れていき、密集とマスクによる息苦しさで意識がモーローとしてきました。
被り物をしている妖怪は必然的に前方に呼ばれます。
前方に出ると目立つので、動き(演技)にも手が抜けず、ますます疲れていきます。
しかしそれ以上に大変なのは新鮮な空気の補給です。
造型マスクの内側は独特のシンナー臭がするんですヨ。
被っているだけで体力が4ポイントずつ下がっていくんです。(謎)
疲れてくると少しでも新鮮な空気が欲しくて待機のたびにマスクを外します。
そして撮りが始まるとまた被る。
終わると取る。始まると被る。終わるとまた………。
今思えばこの呼吸問題が一番辛かったです。
「いつまで続くんだ…?」「もう疲れたよ…。」
エキストラの中からこんな声が聞こえてきます。
「あと4テイクです~!」とスタッフ。
そして4回撮り終えるもまだ続く…。
5回…6回…。
まだ続く。
「あと4回つっただろうが…」「いつまでやんの~?」「とっとと帰らせろ~。」
あたりから不満の声が聞こえてきました。
グチならまだしもマジ切れの人もいます。
エキストラ妖怪の中から本当の邪気が…。(怖)
そういえば映画『陰陽師』で安倍晴明が言っていた。
「人は心一つで鬼にも仏にも変わりまする。」と…。
「監督~。今この群衆はエキストラ(奉仕の仏)ではなく本物の鬼ですぞ~!」
この日は撮影最終日なせいか、予定はどんどん長引いて夜8時を回ってしまいました。
極めつけの最終撮影は勝利のウェーブです。
そうです、野球場のスタンドとかでやるあの人の波です。
あれをこの状態で、このコスチュームで、この密集率でやるというのです…。
最後という言葉に皆も希望が湧いて最後の力を振り絞りました。
しかしこれがまたなかなかOKが出ない。
それもそのはず。
もう皆、ボロボロ状態で勝利を祝える精神状態ではなかったんですから…。
そのウェーブもなんとか乗り切り、そんなこんなで長い長い撮影は無事クランクアップを迎え、地獄のエキストラもなんとか終わりました。
友人達からは「なんて大変なトコに連れてきたんだ~!」とぐーパンチ攻めでした。(笑)
ただこんな一日にも一つだけ夢のような体験ができました。
最後の最後にプロデューサーにお願いしてみたらなんとホントに三池監督と記念撮影をさせてくれたんです!
[井上組と三池監督。角川スタジオエレベータ前にて]
↑
これで疲れもイライラも完全に吹っ飛びました!(笑)
僕ってこんなにミーハーだったのか~って実感しましたヨ。
僕らは良かったのですが、あの場に集まった600人のエキストラの方々。
長く辛かったあの撮影の日を恨まないで下さいネ。
三池監督は皆さんの努力を無駄にせず最高の演出で妖怪を描いていますから安心して映画館に足を運んでください。
本当にあの日はお疲れ様でした!
家に帰って風呂に入ると足の爪に血がにじんでいました。
映画の現場という所がどんなにキツイ所なのかを痛感した一日でした…。
ふう~(疲)
<レポートその6に続く…>